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外観
白色~わずかにうすい褐色, 結晶~結晶性粉末又は塊
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種類
フェニル酢酸は、有機合成用化学薬品として、研究開発用試薬製品や工業用化学製品としての販売があります。しかし、覚せい剤原料として覚醒剤取締法の対象物質であり、輸入、製造、販売、取扱い等には、厚生労働省の許可が必要です。
このため、製品化はされていても実際に入手することは難しくなっており、メーカー自体に在庫がないことも多くあります。なお、このような法規制の関係から入手後の保管管理にも特別な設備が必要です。
工業用薬品としては、25kgや50kgなどの容量単位においてファイバードラム包装で製造されています。
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溶解性
水及びエタノールに溶ける。冷水に微溶、熱水に可溶。エタノール、エーテルに可溶。
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解説
ェニル酢酸.α-トルイル酸ともいう.はっか油,ばら油,ネロリ油などの植物精油中に,遊離またはエステルの形で存在する.合成では,塩化ベンジルをシアン化ベンジルにかえ,加水分解によってつくられる.結晶.融点76 ℃,沸点265 ℃,144 ℃(1.6 kPa).d4771.091.エタノール,エーテルあるいは熱水に可溶.おもにエステルの形でせっけんの香料として用いる.覚せい剤合成原料にも使われる.LD50 > 5000 mg/kg(ウサギ,経皮).水溶液は弱酸性を示し,酸解離指数pK=4.312(25℃)。種々の金属と塩をつくる。
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用途
フェニル酢酸は濃度の薄い時は蜂蜜様の香りで、香水に使われる。またペニシリンGの製造にも用いられる。
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用途
おもにエステルとしてセッケン香料に賞用され、花精油の変調剤にもなる。安価な香水にインドール、シベットの代用品としても用いられる。
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合成
図3. フェニル酢酸の合成
フェニル酢酸はシアン化ベンジルの加水分解により可能です。シアン化ベンジルから、まず2-フェニルアセトアミドが生成し、さらなる加水分解によりフェニル酢酸が生成します。
このように比較的簡単に合成が可能なフェニル酢酸ですが、前述の通り許可なく合成することは禁じられています。有機合成に従事する技術者の場合は、意図せず生成してしまうことのないよう、理解して合成設計を行うことが重要です。
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化学的特性
Phenylacetic Acid occurs in Japanese peppermint
oil, in neroli oil, and in traces in rose oils. It is a volatile aroma constituent
of many foods (e.g., honey). It forms colorless crystals (mp 78°C) that have a
honey odor.
The common route to phenylacetic acid is conversion of benzyl chloride into
benzyl cyanide by reaction with sodium cyanide, followed by hydrolysis. Because of its intense odor, phenylacetic acid is added to perfumes in small quantities
for rounding off blossom odors. Addition to fruit aromas imparts a sweet
honey note.
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天然物の起源
Reported found among the constituents of a few essential oils: tobacco, Rosa centifolia, Bulgarian rose, orange
flowers absolute, neroli and Mentha arvensis of Japanese origin; also reported present among the volatile constituents of cocoa. Also
reported found in guava, papaya, raspberry, strawberry, cooked potato, tomato, peppermint oil, pepper, rye bread, cheddar cheese,
Swiss cheese, Gruyere cheese, boiled mutton, beer, cognac, cider, sherry, grape wines, white wine, sake, cocoa, tea, honey soy protein,
passion fruit, starfruit, mango, mushroom, malt, wort, roasted chicory root, naranjilla fruit, choke berry, sea buckthorn and
Chinese quince.
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使用
Phenylacetic Acid is used in the synthesis of Diclofenac (D436450) and its metabolite 4'-Hydroxydiclofenac (H825225), which is the principal human metabolite of Diclofenac.
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定義
ChEBI: A monocarboxylic acid that is toluene in which one of the hydrogens of the methyl group has been replaced by a carboxy group.
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製造方法
By the treatment of benzyl cyanide with dilute sulfuric acid and other processes.
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法規制情報
2. フェニル酢酸の法規制情報
フェニル酢酸は、前述の通りメタンフェタミンやアンフェタミンなどの覚醒剤の原料となることから覚醒剤取締法によって取り扱いが厳しく禁じられています。覚醒剤取締法は、「覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、現物及びその原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的とする」法律です。
取り扱いには覚醒剤原料研究者指定証が必要であり、違反した場合には、10年以下の懲役 (覚醒剤原料の輸入・輸出・製造) または7年以下の懲役 (覚醒剤原料の所持・譲渡し・譲受け・使用 ) に該当します。なお、その他PRTR法や消防法などでは特に指定を受けていない化合物です。
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使用用途
図2. ペニシリンGの原料としてのフェニル酢酸
フェニル酢酸は、前述の通り覚醒剤取締法によって流通に厳しい規制がかかっています。合法的な使用用途には香水の成分や、医薬品原料などでの使用です。
オーキシン (植物の成長を促す作用を持つ植物ホルモン) として、果物・植物の中に含まれていることが知られています。ハッカ油やバラ油、ネロリ油などの植物精油中にも存在しており、特徴的な香りを活かして香水に使用されます。
濃度が薄い場合には蜂蜜のような香りと形容される物質です。また、エステルの形でせっけんの香料として用いられることもあります。医薬原料としての代表的な用途には、ペニシリンGの合成原料があります。
ペニシリンGは、溶連菌や髄膜炎菌などの菌に対して、強い効果をもつ抗生物質であり、感染症の治療の上で歴史的にも重要な化合物です。
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安全性プロファイル
Moderately toxic by ingestion, subcutaneous, and intraperitoneal routes. An experimental teratogen. Combustible liquid. Used in production of drugs of abuse. When heated to decomposition it emits acrid smoke and irritating fumes
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特徴
安定性の上では、フェニル酢酸は光により変質するおそれがあるとされています。保管条件において高温と直射日光は避けるべき条件です。
また、保管の際は強酸化剤との混触を避けることが必要です。分解生成物としては、やが挙げられます。
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代謝
Phenylacetic acid is conjugated in man and the chimpanzee, but probably in no other species, with glutamine. In most other animals, except the hen, it behaves like benzoic acid, forming glycine and glucuronic acid conjugates. In the hen, it conjugates with ornithine, forming phenacetornithuric acid. Phenacetylglutamine and its addition compound with urea were isolated from human urine alter the administration of phenylacetic acid (Williams, 1959).
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純化方法
Crystallise the acid from pet ether (b 40-60o), isopropyl alcohol, 50% aqueous EtOH or hot water (m 77.8-78.2o). Dry it in vacuo. It can be distilled under a vacuum. [Beilstein 9 II 294, 9 III 2169.]