-
外観
灰黒色の塊
-
種類
地球上に存在する硫化鉄は以下が挙げられます。鉄の硫化鉱物は硫化鉄鉱と呼ばれます。
1. 黄鉄鉱 (Pyrite) (FeS2)
硫化鉱物では最も広く、多量に産出します。六面体や八面体、正十二面体、立方体等の結晶形です。薄黄色で金属光沢をもつため、金と間違えられることも多く、「愚者の黄金」と呼ばれています。
2. 白鉄鉱 (Marcasite) (FeS2)
黄鉄鉱と同じ組成ですが、白鉄鉱は斜方晶形です。黄鉄鉱より低温環境で生成し、450℃以上では黄鉄鉱に変化します。
3. トロイライト (FeS)
地球上ではほとんど産出されませんが、隕石中には広く見出されます。
4. 磁硫鉄鉱 (ピロータイト) (Fe1-xS)
鉄と硫黄の割合に応じて、結晶構造が異なります。
5. グレイガイト (Fe3S4)
磁硫鉄鉱とともに、強磁性を示す鉱物です。
6. マッキナワイト ((Fe Ni)1+xS) (x=0~0.11)
鉄とニッケルの硫化鉱物で、正方晶の結晶です。
-
性質
硫化第一鉄 (硫化鉄II) の分子量は87.91で融点は1195℃、比重は4.84です。CAS番号は1317-37-9です。水には溶けません。また、硫化第一鉄は7水和物として安定して存在します。薄い青緑色の結晶です。硫化鉄(II)七水和物の分子量は278.02、融点は64℃、比重は1.898です。CAS番号は7782-63-0です。水には溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。硫化第二鉄は不安定であるため、結晶構造や磁気的性質は明確ではありません。
二硫化鉄の分子量は120.0で融点 (分解温度) は600℃です。比重は結晶構造によって異なり、斜方晶では4.88、立方晶は5.00です。CAS番号は12068-85-8です。水には溶けず、硝酸には溶けます。硫化鉄は乾燥状態で大気と接触すると、酸化発熱が進み自然発火する危険性があリます。
-
溶解性
水に不溶。 (0.00062 g/100 g 水 18℃)。水に溶けない。酸に溶けて硫化水素を発生する。
-
解説
硫化鉄(II)FeS 比重4.5〜5.0,融点1193℃。灰黒色板状固体。純粋のものは淡黄褐色の結晶。水に難溶。酸には硫化水素を放って溶ける。天然には磁硫鉄鉱として産。隕鉄(いんてつ)中にトロイライトとしても存在。工業的には硫黄と鉄粉とをるつぼ中で融解してつくり,硫化水素発生に用いる。株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
-
用途
硫化水素発生剤。
-
用途
硫化水素発生用。
-
製造法
鉄と硫黄(いおう)の化合物の総称。次のものが知られている。(1)硫化鉄(Ⅱ) 硫化水素の鉄(Ⅱ)塩に相当する。硫化第一鉄ともいう。天然には磁硫鉄鉱として産出するほか、隕石(いんせき)中にトロイライトとして含まれる。いずれもFeの割合がやや少ないベルトライド化合物である。鉄(Ⅱ)塩の水溶液に中性で硫化水素を通じるか、硫化アンモニウムや硫化アルカリを加えると、黒緑色の沈殿として生成する。工業的には鉄粉と硫黄をるつぼ中で融解して製造する。純粋なものは、還元鉄と蒸留硫黄を封管中、真空下で1000℃に熱すると得られる。無色または淡褐色の結晶。市販品は灰黒色のかたまり。湿った状態では空気中で容易に酸化され、硫黄を析出する。水に難溶。無機酸には溶けて硫化水素を発生するので、硫化水素発生源に用いられる。
(2)硫化鉄(Ⅲ) 硫化水素の鉄(Ⅲ)塩に相当する。硫化第二鉄ともいう。鉄(Ⅲ)塩水溶液に十分量の硫化アンモニウムを加えると沈殿として得られる。黄緑色の固体。湿った空気中で容易に酸化され、酸化水酸化鉄(Ⅲ)と硫黄に分解する。水に不溶。酸に溶けて硫化水素を発生する。
(3)二硫化鉄 鉄(Ⅱ)の硫化物で二硫化物イオンS22-を含むことがわかっている。天然に黄鉄鉱(等軸晶系)、白鉄鉱(斜方晶系)として産出する。硫酸鉄(Ⅱ)とポリ硫化アルカリを封管中で165~180℃に加熱すると得られる。真鍮(しんちゅう)に似た光沢をもつ黄色の結晶。水に不溶であるが硝酸および硫酸には溶ける。鉄および硫酸の原料となる。[鳥居泰男]
-
特徴
不定比化合物
-
化学的特性
grey to brown-black lumps or powder
-
物理的性質
Colorless hexagonal or tetragonal crystals; density 4.7g/cm3; melts at 1188°C; insoluble in water; soluble in acids (reacts).
-
使用
Ferrous sulfide can be used as a laboratory source of H2S; in the ceramic industry; as a paint pigment; in anodes; in lubricant coatings.
-
使用用途
硫化鉄第一鉄は、水に溶けやすく手軽に施用できる鉄剤で、主に土壌施用、葉面散布にて使用します。硫化鉄第二鉄は、ポリ硫化鉄第二鉄として、し尿、都市下水、食品加工廃水の三次処理 (脱水および脱臭) として使用されます。二硫化鉄は、電池の原料として使用されています。
硫化鉄は「黄金の金」とされる鉱物黄鉄鉱です。水素の脆化抑制のために、合金およびの製造にも使用されています。かつては硫酸や硫酸アンモニウムの原料として使用されていました。しかし、石油精製工程での脱硫処理により硫黄が副次的にに生産されるようになったこと、石炭や胴、鉛、亜鉛の精錬による排ガスから硫酸が製造されるようになったことから、硫酸や硫酸アンモニウムの原料としては使用されなくなりました。
また、種々の鋼部品の製造に使用される鋼鋳造機の溶鋼品質を改良するための分解剤として使用されています。粗リン酸の精製において、硫化鉄はから重い不純物を除去するための還元剤としても使用されています。
-
参考文献
N. Schönberg, Acta Metall., 2, 427 (1954), DOI: 10.1016/0001-6160(54)90062-0.