-
種類
フルオロ酢酸は、毒性が非常に高いため、滅多に使用されることはありません。また、毒物及び劇物取締法 (毒劇法) により、特定毒物に指定される物質であることから、取り扱いも厳しく制限されています。そのため、一般にはほとんど流通していません。
関連する物質としては、フルオロ酢酸の塩であるモノフルオロ酢酸ナトリウムが研究開発用の試薬として販売されています。1g , 25gなどの容量がありますが、こちらも特定毒物であることから、法規制のかかる化合物です。
尚、酢酸のメチル基の水素がすべてフッ素に置換されたトリフルオロ酢酸は、強酸として汎用されるため、研究開発用試薬・用など、様々な製品があります。名称が酷似していますが、フルオロ酢酸 (モノフルオロ酢酸) の方が毒性が非常に高いため、混同しないように注意が必要です。
-
化学的性質
フルオロ酢酸は、加熱により分解すると、フッ化物などの非常に有毒な蒸気などを生じます。また、多くの化学物質と反応し、有毒で引火性のガスを生じる化合物です。強酸化剤、塩基との混触は危険性があるため、避けるべきとされます。
-
解説
monofluoroacetic acid.C2H3FO2(78.04).CH2FCOOH.熱帯産アカネ科やマメ科植物から見いだされている有毒成分.ヨード酢酸メチルをフッ化銅またはフッ化水銀と加熱するか,クロロ酢酸メチルをフッ化カリウムと加熱して得られたエステルを,加水分解して合成する.針状晶.融点33~34 ℃,沸点164~165 ℃.きわめて毒性が強く,全身けいれんや心臓障害を起こす.ヒトでの最少致死量は2~5 mg/kg(経口).[CAS 144-49-0]
森北出版「化学辞典(第2版)
-
化学的特性
Fluoroacetic acid is a colorless crystalline
solid.
-
使用
Fluoroacetic acid (CH2FCOOH) is very poisonous. It is used to kill rats and mice.
-
定義
ChEBI: A haloacetic acid that is acetic acid in which one of the methyl hydrogens is substituted by fluorine.
-
一般的な説明
A colorless crystalline solid. May be toxic by ingestion. Used to make other chemicals.
-
空気と水の反応
Water soluble.
-
危険性
Toxic by ingestion.
-
健康ハザード
Fluoroacetic acid is very toxic; ingestion of small quantities may cause death.
-
火災危険
When heated to decomposition, Fluoroacetic acid emits highly toxic fumes of fluorine containing compounds. Some of these materials may burn but none ignite readily. These materials may ignite combustibles (wood, paper, oil, etc.).
-
使用用途
フルオロ酢酸は非常に高い毒性を持つため、殺虫剤や殺鼠剤に使用されている化合物です。人体にも極めて有害で、全身のけいれんを引き起こしたり、心臓に障害を起こしたりします。致死量は2~5mg/kgと言われています。
また、関連する物質では、モノフルオロ酢酸ナトリウムが殺鼠剤に、モノフルオロ酢酸アミドが殺虫剤に使われます。
-
生体毒性
図2. フルオロ酢酸の生体毒性
フルオロ酢酸は酢酸の水素原子が一つ置換されただけの化合物ですが、毒性が大幅に高くなっています。これは、フッ素原子の原子半径が小さいため、酢酸と間違えられて酸素呼吸に代謝経路に取り込まれてしまうことが原因です。
好気性代謝経路においてフルオロ酢酸がフルオロクエン酸に代謝され、クエン酸回路に取り込まれます。クエン酸回路は、細胞のエネルギー生産手段であるため、フルオロクエン酸による阻害を受け、細胞死へ至ります。クエン酸回路を代謝経路に持つ生物ならば、動物・植物を問わずあらゆる生物に対して有害です。人体での致死量は2~5mg/kgとされます。
似た名称のものに、がありますが、こちらは毒性も低く、実験室等で強酸として汎用される物質です。トリフルオロ酢酸とフルオロ酢酸 (モノフルオロ酢酸) を混同しないように注意が必要です。
-
安全性プロファイル
Poison by ingestion,
subcutaneous, intraperitoneal, and intravenous routes. Affects the human
central nervous system, causing convulsions
and ventricular fibrdlation. When heated to
decomposition it emits toxic fumes of F and Na2O. See also SODIUM
FLUOROACETATE.
-
職業ばく露
This material is used as a rodenticide
and a drug.
-
合成方法
フルオロ酢酸の原理を合成方法と毒性などの観点から解説します。
1. フルオロ酢酸の合成方法
図1. フルオロ酢酸の合成
ヨード酢酸メチルをフッ化銅またはフッ化水銀と加熱する、またはクロロ酢酸メチルをと加熱するなどの方法によって、フルオロ酢酸のエステルを得ることができます。フルオロ酢酸は、これらのエステルを加水分解することによって合成・製造が可能です。
また、フルオロ酢酸は自然界の中では植物の中から見つかっている物質です。南アフリカなどに生息する植物「ジフブラール」をはじめとして、南半球を中心に、モノフルオロ酢酸塩 (カリウム塩) を含む有毒植物があることが知られています。
-
輸送方法
UN2642 Fluoroacetic acid, Hazard Class: 6.1;
Labels: 6.1-Poisonous materials.
-
不和合性
Incompatible with oxidizers (chlorates,
nitrates, peroxides, permanganates, perchlorates, chlorine,
bromine, fluorine, etc.); contact may cause fires or explo sions. Keep away from alkaline materials, strong bases,
strong acids, oxoacids, epoxides. Reacts with reducing
agents releasing flammable gas.
-
廃棄物の処理
Use a licensed professional
waste disposal service to dispose of this material. Dissolve
or mix the material with a combustible solvent and burn in
a chemical incinerator equipped with an afterburner and
scrubber. All federal, state, and local environmental regula tions must be observed.