-
性質
ポリアクリロニトリルは、白色または黄色の固体です。軟化点が高いため、溶融せずに300℃以上の高温で分解します。
炭化水素やアルコール類、エーテル等には不溶ですが、ロダン塩や等の濃厚水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スクシノニトリル、2-オキサゾリドンには溶けます。ポリアクリロニトリルは、等のアルカリを添加するか、200℃以上で加熱すると、ピリジン環が生成されて茶褐色に着色します。
-
性質
1. アクリル樹脂
アクリル樹脂という名前から、のみを重合した高分子のことを指すように思われますが、実際はメタクリル酸エステル、またはアクリル酸エステルと呼ばれる有機化合物を重合することで製造されています。製造されたアクリル樹脂は、加工が容易で耐衝撃性、耐久性、耐熱性が高いです。中でも一番の特徴は高い透明性で、同様に高透明なと共に有機ガラスとも呼ばれます。
そのため、パネル状にしたアクリル樹脂が、水族館の水槽などに使用されています。デメリットとして、表面が傷つきやすいことが挙げられます。アクリル樹脂は塗料の基材としても使用されます。アクリル樹脂が使用されたアクリル樹脂塗料は、他の樹脂を基材にした塗料と比較して、高い光沢性と弾力性があるが耐久性が低いという特徴をもち、価格帯は最も安価です。
2. アクリル繊維
アクリル繊維もアクリル樹脂と同様に原料はアクリル酸ではなく、と呼ばれる有機化合物を主原料として、他の有機化合物と重合し、繊維状に製造されたものです。
アクリル繊維の特徴は、軽さ、保温性、染色性が良いことで、ウールと比較すると価格も安く、アクリル繊維で作った衣類は型崩れしにくいのがメリットです。反面、吸湿性が低いため、衣類にした際にはムレやすく、静電気が発生しやすいことがデメリットです。
アクリル繊維はアクリロニトリルが質量比で85%以上含まれるものに使われる呼称で、似た名前でアクリル系繊維というものがあります。アクリル系繊維は、アクリロニトリルが質量比35%以上85%未満のものを呼びます。残りの成分は塩化ビニリデンやが用いられているため、難燃性に優れており、難燃製品に用いられます。
ただし、2020年11月にJIS用語、2022年1月以降は家庭用品品質表示法、繊維製製品品質表示規定において、アクリル系繊維の名称は、モダクリル繊維に変更されることになりました。今後はアクリル系繊維の名称は見られなくなっていく可能性が高いです。
-
解説
略称PAN.アクリロニトリルは非常に重合しやすく,過酸化ベンゾイルなどによってラジカル重合,また金属ナトリウムやナトリウムメトキシドなどによってイオン重合して,ポリアクリロニトリルを与える.工業的にはオーロン繊維([別用語参照]アクリル繊維)として知られている.また,スチレンやメタクリル酸メチルなど,ほかのビニル化合物との共重合も容易である.ポリアクリロニトリルは,炭化水素,アルコール類,エーテルなどの普通の有機溶媒には不溶で,良溶媒としては,ロダン塩,塩化亜鉛などの濃厚水溶液,N,N-ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,スクシノニトリル,2-オキサゾリドンなどがある.ポリアクリロニトリルは,水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加するか,あるいは200 ℃ 以上で加熱するとピリジン環が生成して茶褐色に着色する.着色を防止するために,工業的にはAlやSrの有機酸塩,Ca塩,無水マレイン酸などを安定剤として加える.[CAS 25014-41-9]
森北出版「化学辞典(第2版)
-
用途
ポリアクリロニトリルは,アクリロニトリルの重合体で,アクリル繊維の主要成分。重合はラジカル重合により,通常水溶液重合または乳化重合で行われる。白色または黄色の固体で軟化点が高く,加熱すると溶融することなく 300℃以上で分解する。他のビニル単量体との共重合体はアクリル繊維として広く用いられ,ABS樹脂などの成分として使用されるほか,炭素繊維の原料としても利用されている。
アクリロニトリルCH2=CHCNの重合体(ポリマー)。PAN(パン)と略称される。単量体(モノマー)のアクリロニトリルはアクリル系の合成繊維や、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)系の合成ゴムの主原料であり、プラスチックとしての利用にはブタジエン、スチレンとの三元共重合物としてのABS樹脂がある。現在、注目されている炭素繊維は、PAN系のものが主流である。ポリアクリロニトリル系合成繊維(アクリル繊維)は、ポリアミド系(ナイロン)、ポリエステル系とともに、合成繊維の主力を占めている。
-
製造法
アクリロニトリルは、以前はアセチレンにシアン化水素酸(青酸)を反応させて製造されていたが、現在ではプロピレンを原料として、青酸のような有害ガスを使わないソハイオ(sohio)法が採用されている。反応式は次のようになる。
ソハイオ法によってアクリロニトリルは、白色ないし黄色の柔らかい不透明な粉末あるいは塊として得られる。単独に用いられることは少なく、いろいろな単量体と共重合させたものが利用されている。
-
化学的特性
white chalk-like solid
-
使用
Polyacrylonitrile (PAN) is used as polymeric carbon precursor to form carbon fibers, electrospun activated carbon materials having meso-macro pores, carbon black additives.These are consecutively used in hydrogen storage, EMI shielding, electrochemistry, separation processes. It may find applications in PAN based single walled carbon nanotube composites.
-
定義
ChEBI: A macromolecule composed of repeating cyanoethylene units.
-
一般的な説明
PAN molecule has strong polar nitrile groups.It is relatively insoluble in nature. PAN based carbon fibers possess very high strength compared to other polymeric precursors. When subjected to heat treatment, it can produce high carbon yield giving rise to thermally stable, highly oriented, graphite like molecular structure. Generating carbon-fiber from PAN based fiber is a combination of three processes-- namely stabilization, carbonization and graphitization.
-
使用用途
1. アクリル繊維
ポリアクリロニトリルは、軟化点が高く、繊維として優れた性質をもっています。ポリアクリロニトリルを主成分とする繊維をアクリル繊維といいます。
2. 炭素繊維用原料
ポリアクリロニトリルは、や炭素繊維強化樹脂 (CFRP) の原料としても重要です。炭素繊維は、非常に軽く、高い強度を持ち、耐熱性や耐薬品性があります。そのため、宇宙開発や高級スポーツ用品、軍事用途などに利用されています。
3. 医薬・バイオ
ポリアクリロニトリルは、医薬、バイオ産業で用いられる分離膜の材料としても使用されています。ポリアクリルニトリルを用いた中空糸膜はタンパク質の吸着が少なく、分離性能にも優れています。
アクリル繊維や炭素繊維用原料、水処理向けに需要が伸びており、その成長は特に中国の炭素繊維産業と水処理産業の成長に牽引されています。中国は世界最大のポリアクリロニトリルの生産国です。政府も炭素繊維産業の発展に向けた投資を積極的に行っています。
-
使用用途
1. アクリル樹脂
アクリル樹脂は1934年頃に工業化され、プラスチックの原料として今日まで様々な場所で使用されています。当初の使用用途は戦闘機のキャノピーと呼ばれる窓部分など軍事利用でした。
しかし、現在では無機ガラスの代替用途、照明器具や建材、電子部品、産業資材、など多岐に渡ります。
2. アクリル繊維
アクリル繊維は1950年ごろに開発されました。ウールに似た性質を持つように開発されており、主な使用用途はセーターなどの衣料品です。その他、ニット製品、毛糸、毛布、カーペットなどに使用されています。
これら以外にも工業分野にて、に使用するろ材や、アスベストの代替として建築分野でも使用しています。
-
製造方法
アクリル繊維 (PAN繊維) を原料にして、PAN系炭素繊維は作られています。PAN系炭素繊維は、強度と弾性率が非常に高く、信頼性を求められる宇宙産業から、身近なレジャー用品まで幅広く使用されています。
耐炎化工程と呼ばれる、空気中で200〜300℃で加熱してアクリル繊維の分子を環状構造にします。続く炭素化工程で、不活性ガス中で1,000℃以上の熱を加え、水素、酸素、窒素を除き炭素のみからなる結晶構造へと変化させます。その後2,000℃以上の熱を加えて、黒鉛化しPAN系炭素繊維が完成します。
参考文献
-
製造方法
1. アクリル樹脂の製造方法
アクリル樹脂は多くの場合は、原料モノマーを懸濁重合と呼ばれる重合方法で重合したのち、高分子成分から水を除去することでアクリル樹脂の製品になります。塗料用途で使用する場合は、溶液重合や乳化重合と呼ばれる重合方法で重合後、高分子を溶解または分散させている溶媒を除去させずに、そのまま塗料の原料として使用します。
2. アクリル繊維の製造方法
アクリル繊維の原料のアクリロニトリルは、を金属酸化物触媒の存在下、と酸素を作用させ生産されます。このアクリロニトリルを有機溶媒に溶解させた溶液を、細いノズルから凝固液の中に繊維状に押出します。繊維状のアクリロニトリルは凝固液により固まることで、アクリル繊維になります。
参考文献
-
純化方法
Precipitate it from dimethylformamide by addition of MeOH.