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外観
うすい黄色~くすんだ黄色~暗い緑色透明液体
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種類
シクロオクタテトラエンは、有機合成上有用な化合物として、主に研究開発用試薬として販売されています。容量には、1mL , 5mL , 1g , 5gなどの種類があり、ガラス瓶容器で販売されている物質です。通常、冷蔵もしくは冷凍保管が必要な試薬として取り扱われます。
製品としてのシクロオクタテトラエンには0.1%程度の重合禁止剤 (など) が含まれています。これは、シクロオクタテトラエンが非常に重合しやすい化合物であるためです。
その他に関連する物質では、シクロオクタテトラエン鉄トリカルボニルが研究開発用試薬として販売されています。この物質中では、シクロオクタテトラエンは鉄配位子としての機能を果たしています。
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化学的性質
シクロオクタテトラエンの化学反応
シクロオクタテトラエンは、8π(パイ)電子系の環状不飽和炭化水素です。ヒュッケル則では、π電子の数が4n + 2 (n は0を含めた正の整数) であれば芳香族性を有するとされますが、シクロオクタテトラエンは該当しません。4nπ電子系の分子ですが、平面構造を取らないため、反芳香族にも分類されず、非芳香族の分子に分類されます。
all-cis型のシクロオクタテトラエンの配座は、おけ型 (ボート型) 構造です。炭素原子間の距離は結合の種類によって異なります。また、シクロオクタテトラエンは付加反応が起こりやすい化合物です。異性体であるビシクロオクタトリエンに転位しやすく、臭素化、付加反応、酸化反応などは、ビシクロオクタトリエンの形の反応生成物を与えます。
シクロオクタテトラエンの化学反応の中にはπ電子の数を変化させ、非芳香族から芳香族へと変わるものがあります。例えば、との反応です。カリウム原子より二つ電子を受け取ってジアニオン (シクロオクタテトラエンジアニオン) となり、π電子数が10となってヒュッケル則を満たします。この二カリウムシクロオクタテトラエニドは、ウラノセン (シクロオクタテトラエンジアニオンとウランの化合物) のとなります。
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解説
C8H8(104.15).シクロオクタテトラエン, 工業的には,アセチレンからシアン化ニッケルを触媒とするレッペ反応により合成される."常温では黄色の液体.融点-7 ℃,沸点142~143 ℃.d420"0.9206.空気中で徐々に重合し,酸化剤,ハロゲンなどと容易に反応する.構造はベンゼンのような平面ではなく,図のように折れまがった桶(おけ)形構造をしているので芳香族性は示さない.また,アンチ芳香環としての性質も示さず,単なるポリオレフィンとみなすことができる.重合しやすく,酸化剤,ハロゲン,親ジエン化合物などと反応する.森北出版「化学辞典(第2版)
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構造
環状の不飽和炭化水素の一つ。[8]アヌレンともよばれる。COTと略称される。悪臭をもつ黄色の液体。空気中において徐々に重合する。1912年ドイツのR・ウィルシュテッターにより、天然物のペレチュリンから初めて合成された。工業的には高圧下、シアン化ニッケルを触媒として、4分子のアセチレンを付加環化させるレッペ法で製造される。この化合物はベンゼンの同族体として、芳香族性をもつかどうか興味をもたれたが、結合角の関係で平面構造をとれないうえ、8π(パイ)電子系であるのでヒュッケル則から平面構造は不安定であると予測され、実際にも非平面構造をとっていて単なるポリオレフィンの性質しか示さない。しかし、金属カリウムで還元すると、2電子の供与を受け、10π電子をもったシクロオクタテトラエン・ジアニオンが生成する。この化合物はヒュッケル則によると芳香族性による安定化を受けるので平面構造をとっている。
シクロオクタテトラエン(図のA)は原子価異性体のビシクロオクタトリエン(図のC)に転位しやすく、付加反応、臭素化、酸化反応などは、ビシクロオクタトリエンの形の反応生成物を与える。環状化合物の重要な合成中間体として、またフェニルアセトアルデヒドやテレフタルアルデヒドの合成原料として用いられる。[向井利夫・廣田 穰]
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合成
シクロオクタテトラエンの合成
シクロオクタテトラエンは、をに溶解させてシアン化ニッケルを触媒として15~25気圧に加圧し、加熱しながら重合させる方法 (レッペ法) によって合成されます。
歴史的には、1912年にドイツのR・ウィルシュテッターにより、天然物のペレチュリンから初めて合成されました。
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化学的特性
1,3,5,7-Cyclooctatetraene (COT) is an unsaturated derivative of cyclooctane, with the formula C8H8. It is also known as [8]annulene. This polyunsaturated hydrocarbon is a colorless to light yellow flammable liquid at room temperature. Because of its stoichiometric relationship to benzene, COT has been the subject of much research and some controversy.
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使用
1,3,5,7-Cyclooctatetraene is used in the synthesis of highly organic film for silicon surfaces to improve its chemical and physical properties. It is also used in liquid state organic dye lasers, as triplet state quencher to reduce dye blinking.
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定義
ChEBI: An antiaromatic annulene that is cyclooctane having four double bonds at positions 1, 3, 5 and 7.
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一般的な説明
A colorless liquid. May irritate skin and eyes. Less dense than water and insoluble in water. Flash point 70°F. Vapors heavier than air. Used to make rubber.
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空気と水の反応
Highly flammable. Insoluble in water.
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反応プロフィール
1,3,5,7-CYCLOOCTATETRAENE may react vigorously with strong oxidizing agents. May react exothermically with reducing agents to release hydrogen gas.
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健康ハザード
Inhalation or contact with material may irritate or burn skin and eyes. Fire may produce irritating, corrosive and/or toxic gases. Vapors may cause dizziness or suffocation. Runoff from fire control or dilution water may cause pollution.
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使用用途
シクロオクタテトラエンは、シリコン表面用の高有機膜の合成に使用されます。その他に、液体状態の有機色素レーザーや、2色素のまばたきを低減するための三重項状態消光剤としても使用用途があります。
また、有機合成化学においても合成上有用な化合物として扱われます。主な用途は、環状の化合物の合成中間体や、テレフタルアルデヒドやの合成原料などです。
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純化方法
Purify the triene by shaking 3mL with 20mL of 10% aqueous AgNO3 for 15minutes, then filtering off the AgNO3 complex which precipitates. The precipitate is dissolved in water and added to cold concentrated ammonia to regenerate the cyclooctatetraene which is fractionally distilled under vacuum onto molecular sieves and stored at 0o. It is passed through a dry alumina column before use [Broadley et al. J Chem Soc, Dalton Trans 373 1986]. [Beilstein 5 I 228, 5 IV 1331.]