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外観
金黄色~赤黄色, 結晶
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性質
塩化金酸は、水に極めてよく溶けます。アルコールやエーテルにも可溶です。塩化金酸は水に溶けると、テトラクロリド金 (III) 酸イオンである[AuCl4]−を生じます。水溶液中では加水分解して[AuCl3OH]-を生じるため、酸性を示します。
塩化金酸には潮解性があり、加熱によって分解して(III) と塩化水素が生じます。保管や取り扱いの際には湿度にも注意が必要です。
塩化金酸の水溶液は橙黄色です。塩化金酸の水溶液に光を当てると、分解して紫色の金コロイドが析出します。
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溶解性
水及びエタノールに極めて溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすい。
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解説
塩化金酸とは、3価の金を含む黄金色ないし赤黄色の針状結晶です。
塩化金酸は、テトラクロロ金酸 (英: tetrachloroauric(III) acid) や金塩化水素酸 (英: hydrogen aurichloride) とも呼ばれます。通常は、四水和物 (HAuCl4・4H2O) として存在します。
塩化金酸は、腐食性があるなど毒性が強い物質です。劇物にも指定されているため、取り扱いには注意が必要です。
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用途
高純度金属化合物。
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構造
塩化金酸は3価の金のクロリド錯体であり、化学式はHAuCl4です。溶液中のテトラクロリド金 (III) 酸イオンである[AuCl4]−は、四配位の平面四角形を取っています。
塩化金酸の四水和物は、オキソニウムイオンを含んだ淡黄色の針状結晶です。化学式ではH3O+AuCl4−・3H2Oと表されます。
塩化金酸の無水物のモル質量は339.785g/mol、四水和物のモル質量は411.85g/molであり、四水和物の密度は3.9g/cm3です。
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合成
塩化金酸の合成法・反応
塩化金酸は、金を王水に溶かすか、金を中でと反応させることで生成します。この水溶液を蒸発析出させると、四水和物が得られます。
塩化金酸を加熱すると、塩素 (Cl2) 、塩化水素 (HCl) 、金 (Au)に分解します。具体的には、熱するとAuCl3やAuClを経由して分解し、強熱すると塩素が発生してAuが残ります。
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危険性
塩化金酸の危険性
塩化金酸を吸入した際には、鼻、喉、気管支などの粘膜を刺激します。皮膚に触れた塩化金酸を放置すると、赤色の斑点が皮膚に残るほか、塩化金酸が眼に入ると、粘膜を激しく刺激します。
それに加えて無機金塩類は、強い酸化作用や腐食性があるため、比較的危険性が高いです。
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使用上の注意
純度は金属ベースで差数法によって算出したもので、重量又は容量分析等の化学的方法によるものではありません。使用目的により、正確な含量が必要な場合は、それらの方法によって測定する必要があります。
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使用用途
塩化金酸は、金属としての利用の他に、陶磁器の着色、ルビーガラスの製造、金メッキ、インキ、ガラス着色など、装飾用途でも広く利用されています。そのほか、写真感光材や医療品、アルカロイド用試薬、触媒、金粉、金ナノ粒子等の製造なども使用用途の1つです。
金メッキや金ナノ粒子など、塩化金酸を使用した生成物は、導電性や安定性が高いことが特徴です。そのため、電子材料の電極等といった用途に使用されることもあります。
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特徴
塩化金酸塩の特徴
塩化金酸塩の具体例として、塩化金酸ナトリウムや塩化金酸カリウムなどが挙げられます。それ以外にも、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩 (NH4) 、コバルト塩 (Co) 、ニッケル塩 (Ni) なども知られています。