解説
グリニャール試薬は,一般式RMgX(Rはアルキルまたはアリール基,XはCl,Br,I)をもつ有機マグネシウム化合物.1900年にF.A.V. Grignard(グリニャール)によってはじめて報告された.普通,無水のエーテル系溶媒(ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなど)中で,RXと金属Mgを作用させることにより調製し,反応性が高いため単離せずにそのまま用いることが多い.多くの有機化合物,とくにカルボニル化合物と反応して炭素-炭素結合を形成するので,有機合成において重要な試薬である.溶液中では,R2MgとMgX2などとの平衡混合物として存在する.
主成分は有機マグネシウム化合物である。代表的求核試薬として用いられる。たとえば,水,アルコール,アミン,アセチレンなど活性水素をもつ化合物と反応させると炭化水素を発生する。ホルムアルデヒドと反応させると第一アルコールを,その他のアルデヒドと反応させると第二アルコールを,ケトン,エステル (ただし,ギ酸エステルからは第二アルコールが生成する) ,酸無水物,酸ハロゲン化物と反応させると第三アルコールを生成する。また二酸化炭素と反応させるとカルボン酸,ハロゲン化アルキルとの反応から炭化水素を生成し,ケイ酸エステルと反応させるとケイ素化合物となる。これらの反応は物質の合成や確認などに広く利用される。森北出版「化学辞典(第2版)