解説
絹は広義には,昆虫が巣をつくりそれがまゆの形になったとき,まゆを形成する繊維をいう.実用上は家蚕のほかに,柞蚕(さくさん),エリ蚕などのヤママユガ系野蚕,アフリカ原産のアナフェ野蚕などがある.絹の主成分であるフィブロインは単純タンパク質からなり,家蚕ではタンパク質濃度約30% で中部絹糸腺にゲル状に蓄えられ,さらに中部絹糸腺の異なるところから分泌される3種類のセリシン溶液により3層に被覆され,前部糸腺を経て繊維化し,吐糸によりけん引作用により引き出され,糸条を形成する.まゆ糸(繭糸:けんし)は三角形断面をもった2本のフィブロインのまわりをセリシンで包着した形をとっている.フィブロインのアミノ酸組成は,Gly(31%),Ala(43%),Ser(10%),Tyr(5%)が多い.