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外観
白色〜褐色, 粉末
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性質
p-クマル酸は結晶性固体です。融点は210〜213°Cで、沸点は231.61°Cです。水に難溶ですが、ジエチルエーテルやエタノールにはよく溶解します。
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反応
p-クマル酸は4-エチルフェノールの前駆体です。4-エチルフェノールは、ワイン中でブレタノマイセス属酵母によって生産されます。4-ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼによって、p-クマル酸から4-ビニルフェノールに変換可能です。ビニルフェノールレダクターゼにより4-ビニルフェノールが還元され、4-エチルフェノールが生成します。
シス-p-クマル酸グルコシルトランスフェラーゼは、シス-p-クマル酸とUDP-グルコースを用いて、p-クマル酸グルコシドとUDPを合成します。シス-p-クマル酸グルコシルトランスフェラーゼは、グリコシルトランスフェラーゼのとくにヘキソシルトランスフェラーゼに分類される酵素です。
p-クマル酸の持つ2-プロペン酸側鎖に水素が付加すると、フロレト酸が得られます。フロレト酸は、干し草を食べる羊の第一胃に存在します。
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溶解性
エタノールに溶ける。エタノール、酢酸に可溶。エーテル、アセトン、冷水に難溶。クロロホルム、ベンゼン、リグロインに不溶。水と加熱すると分解する。一部分解しつつ昇華する。
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解説
【Ⅰ】coumarinic acid.[別用語参照]ヒドロキシケイ皮酸.【Ⅱ】coumalic acid.2-oxo-1,2H-pyran-5-carboxylic acid.C6H4O4(140.10).リンゴ酸に発煙硫酸を作用させると得られる."黄色の柱状晶.融点206~209 ℃,沸点218 ℃(16 kPa).メタノール,酢酸に可溶.熱アルカリで処理するとギ酸とグルタコン酸を与える.[CAS 500-05-0]
森北出版「化学辞典(第2版)
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構造
クマル酸の構造
クマル酸のモル質量は164.16g/molで、化学式はC9H8O3と表されます。化学式がC9H8O2であるに、ヒドロキシ基が結合した構造を持つ化学物質です。ヒドロキシ基の位置の違いで、o-クマル酸、m-クマル酸、p-クマル酸の3つの異性体が存在します。
p-クマル酸には、トランス-p-クマル酸とシス-p-クマル酸の2種類があります。トランス-p-クマル酸の密度は1.1403g/cm3で、コニフェリルアルコールやシナピルアルコールとともに、リグニンの主要な構成要素の一つです。
p-クマル酸の誘導体であるp-クマル酸グルコシドはアマ種子を含んだパンに存在し、p-クマル酸ジエステルはカルナウバロウに含まれています。
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合成
図3. p-クマル酸の合成
シトクロムP450 (英: Cytochrome P450) 依存性酵素のトランス-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼの作用で、ケイ皮酸からp-クマル酸が得られます。チロシンアンモニアリアーゼによって、L-チロシンからも生成します。
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化学的特性
pale yellow to pale brown powder
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使用
Coumalic acid undergoes thermal reaction with 1,3-butadiene to yield dimethyl tricycle[3.2.1.02,7]oct-3-ene-2,4-dicarboxylate.
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一般的な説明
Decarboxylates to α-pyrone, a Diels-Alder diene.
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使用用途
クマル酸は、主に化学研究分野で試薬として使用されます。p-クマル酸はタンパク質検出方法であるウェスタンブロッティング (英: Western blotting) で、タンパク質検出のための化学発光基質の成分として利用可能です。
またp-クマル酸は、発ガン性物質であるニトロソアミンの生成を抑制する働きがあります。ニトロソアミンは、食品添加物に含まれる亜硝酸塩とアミン類が反応して生成され、とくにヒトの胃で生成されやすいです。そのため、p-クマル酸は胃ガンのリスクを減少できると考えられており、研究が進められています。
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特徴
m-クマル酸やo-クマル酸は、酢に含まれています。3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン酸とNAD+から、2-クマレートレダクターゼによってo-クマル酸が生成します。2-クマレートレダクターゼは、フェニルアラニンの代謝に関与する酵素です。
参考文献
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純化方法
The acid crystallises from MeOH. The methyl ester has m 73-74o (from pet ether) and b 178-180o/60 mm. [Beilstein 18/8 V 120.]