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外観
黒色粉末~結晶
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性質
塩化ルテニウムの融点は500°Cで、常温で黒色あるいは暗褐色の固体です。
RuCl3・xH2Oは多種多様な化合物の前駆体であり、ルテニウム化合物はさまざまな酸化状態を取ります。+2、+3、+4などの酸化数が安定です。
塩化ルテニウム(II)は二塩化ルテニウムとも呼ばれ、化学式はRuCl2です。
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反応
温和な条件でRuCl3・xH2Oは、一酸化炭素と反応します。ただし塩化鉄は、一酸化炭素とは反応しません。一酸化炭素によって、赤〜茶色のRuCl3を黄色に近いRu(II)に還元します。
例えば、1気圧の一酸化炭素が、RuCl3・xH2Oのエタノール溶液と反応すると、[Ru2Cl4(CO)4]、[RuCl3(CO)3]-、 [Ru2Cl4(CO)4]2-などが得られます。さらに配位子を溶液に加えると、RuClxCOyLz (L = PR3) 型の錯体を合成可能です。
亜鉛を用いてカルボニル化した錯体を還元すると、三角形のクラスターを持つRu3(CO)12と表される、オレンジ色のトリルテニウムドデカカルボニルが生成します。
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解説
通常はルテニウム(III)塩のことをいう。[塩化ルテニウム(III)] 化学式RuCl3。無水和物にα型とβ型が知られ,水和物に1水和物と3水和物が知られている。市販のものは3水和物RuCl3・3H2Oに近い組成を示す。β型は暗褐色の毛状粉末で,エチルアルコールに溶ける。塩素中450℃でα型に変化する。α型は黒色葉状の結晶で,水,エチルアルコールに溶けない。1水和物は黒褐色板状の結晶で水に溶ける。3水和物は実際にはトリクロロトリアクアルテニウム(III)[RuCl3(H2O)3]という正八面体錯体であり,mer形とfac形の幾何異性体が存在する(図参照)。
株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版について 情報
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解説
塩化ルテニウム(Ⅱ):RuCl2(171.98).二塩化ルテニウムともいう.塩化ルテニウム(Ⅲ)を電解還元すると得られる.水,酸,アルカリに不溶.無水エタノールに溶けて青色となる.還元剤として作用する.【Ⅱ】塩化ルテニウム(Ⅲ):RuCl3(207.43).三塩化ルテニウムともいう.金属ルテニウムに塩素を通じて加熱すると得られるが,その他の製法により種々の状態のものが得られる.黒色ないし暗褐色.潮解性のものと非潮解性のものがある.エーテルに不溶.希塩酸に溶けるが,加水分解しやすい.電極用原料,Ruめっき原料,触媒原料,ルテニウム化合物の合成原料として用いられる.[CAS 10049-08-8:RuCl3][CAS 14898-67-0:RuCl3・nH2O]
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用途
塩化ルテニウム(III)3水和物を形成する事も可能であり、ルテニウム化合物の原料として広く用いられる。
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構造
塩化ルテニウムの化学式はRuCl3と表されます。1:4の割合の一酸化炭素と塩素の雰囲気下で、ルテニウムの粉末を700°Cまで熱してから、冷却すると合成可能です。塩化ルテニウムの水和物には、1水和物と3水和物が知られています。 塩化ルテニウムには、α型とβ型の結晶形があります。
α型は黒色葉状の結晶です。塩化クロム(III)と同様の結晶構造を取っています。ルテニウム間の距離は346pmです。水やエチルアルコールに溶けません。
β型は暗褐色の毛状粉末で、8面体の面と面が重なり合った形の結晶構造を取っています。ルテニウム間の距離は283pmです。エチルアルコールに可溶です。β型の結晶を400〜600°Cに加熱すると、α型結晶へ不可逆的に変わります。
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物理的性質
Ruthenium(III) chloride is a reddish brown or black leafy crystal, easily deliquescent. It forms a dark red solution. Relative density 3.11, decomposed into monomers when it is higher than 500°C. It is insoluble in cold water and carbon disulfide. Insoluble in cold water and carbon disulfide, decompose in hot water, insoluble in ethanol, soluble in hydrochloric acid.
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使用
Ruthenium(III) chloride is widely used as a starting material of ruthenium complexes. It acts as a catalyst used in the oxidative cyclization of 1,7-dienes to oxepane diols. It is used in the hydroxylation of tertiary hydrocarbons in combination of periodate or bromate. It is involved as a catalyst in the synthesis of 2,3-pyridinedicarboxylic acid-13C3, 15N, where the unlabelled analog is an inhibitor of glucose synthesis.
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調製方法
RuCl3, is made by direct chlorination of the metal at 700 °C (1,292 °F). Two allotropic forms result. The trihydrate is made by evaporating an HCl solution of ruthenium (III) hydroxide to dryness or reducing ruthenium (VIII) oxide in a HCl solution.
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反応性
Ruthenium(III) chloride interacts with potassium iodide to produce an iodide precipitate, precipitates as ruthenium trisulphide when hydrogen sulphide is introduced into the solution, and can form the corresponding ammonia, cyanide, and nitrite complexes with ammonia, potassium cyanide, and potassium nitrite complexes, and is reduced to blue divalent ruthenium ions when interacting with sodium amalgam or titanium trichloride.
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使用用途
塩化ルテニウムの水和物は、さまざまな化合物のとして利用可能です。塩化ルテニウム(III)n水和物はルテニウム触媒の原料として用いられ、有機合成で不斉水素化反応やメタセシス反応などに利用されています。
また、Ruめっき (ルテニウムめっき) の原料にも利用されています。Ruめっきは、従来のと同等の硬度や耐摩耗性を有しながら、コストが2分の1と安価です。そのため、ロジウムめっきの代替品として期待されています。
そのほか、電極用原料や貴金属触媒としても用いられています。
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安全性プロファイル
Poison by intraperitoneal route. Incompatible with iron pentacarbonyl and zinc. When heated to decomposition it emits toxic fumes of RuO, and Cl-. See also RUTHENIUM COMPOUNDS.
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概要
塩化ルテニウムとは、塩素とルテニウムの化合物のことです。
一般的に塩化ルテニウム(III)や三塩化ルテニウムと呼ばれています。塩化ルテニウムの無水物は、よく物性が研究されているものの、実用的に用いられることはあまりありません。
通常、RuCl3・xH2Oで表されるような、水和物として存在しています。無水物と水和物は暗褐色~黒色で、3水和物が形成されることもあり、ルテニウム化合物の原料に使用可能です。
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参考文献
J.M. Fletcher, et al., J. Chem. Soc. A, 1967, 1038 (1967), DOI: 10.1039/J19670001038; F. Hulliger, “Structural Chemistry of Layer-Type Phases”, Reidel (1976), pp. 312-313, DOI: 10.1007/978-94-010-1146-4; H. Hillebrecht, et al., J. Alloys Compd., 246, 70 (1997), DOI: 10.1016/S0925-8388(96)02465-6; R.D. Johnson, et al., Phys. Rev. B, 92, 235119 (2015), DOI: 10.1103/PhysRevB.92.235119.