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外観
白色の結晶性粉末
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定義
本品は、次の化学式で表されるアミノ酸である。
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性質
グルタミン酸は、非必須アミノ酸の1つで、アラニン、アスパラギン酸、セリンをつくる際ために必要なアミノ酸です。Glu、Eの略号で表わされ、自然界ではL-グルタミン酸として存在しています。CAS登録番号は56-86-0です。
1. 物理的性質
グルタミン酸は、分子式C5H9NO4、分子量147.13の白色無臭の結晶性粉末です。沸点は249℃で、融点、引火点、分解温度はありません。可燃性もないことから、比較的安全に取り扱うことが可能です。
2. 化学的性質
水に溶けにくく、エタノールおよびジエチルエーテルにはほどんど溶けません。混触危険物質は強酸化剤であるため、保管、使用の際は、強酸化剤との接触を避ける必要があります。
熱分解時に、刺激性のある有毒なガスと蒸気を放出する可能性が高いです。局所排気装置の設置された場所で作業を行い、高温での使用は避けます。
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歴史
グルタミン酸は1866年、ドイツの化学者リットハウゼン氏によって、小麦のタンパク質であるグルテンの加水分解物として発見されました。その後、1908年、東京帝国大学 (現東京大学) 教授であった池田菊苗氏は、グルタミン酸が旨味を持つことを発見しました。そして、グルタミン酸は「甘味、塩味、酸味、苦味」の4つの基本味に加え、5番目の基本味として「旨味」が存在することを発表しました。
また、ナトリウムと結びついた形にすることで、水に溶けやすく、旨味がより増すことも明らかになりました。味の素の創設者である鈴木三郎助氏が、グルタミン酸ナトリウムの商品化に取り組み、1909年に世界初の化学調味料が発売されました。
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溶解性
水100gに0.84g (25℃), 2.19g (50℃)溶解。有機溶媒に殆ど不溶。水に溶けにくく、エタノール及びジエチルエーテルにほとんど溶けない。
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解説
グルタミン酸とは、体内で合成可能な非必須アミノ酸の1種です。
シナプス間の神経伝達物質としての役割を担います。脳内でグルタミン酸が、その受容体に結合することで受容体を活性化させ、学習の情報を伝達します。また、グルタミン酸は、旨味成分としても有用です。
グルタミン酸の製造方法には、加水分解法や抽出法、化学合成法などいくつか存在します。現在は、サトウキビの糖蜜を発酵菌により発酵させてグルタミン酸を得るアミノ酸発酵法が主流です。
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用途
調味料、食品鮮度保持剤
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用途
タンパク質, ペプチド合成用。その他、培地添加用, シグナル伝達研究用など。
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化粧品の成分用途
ヘアコンディショニング剤、保湿.湿潤剤、皮膚コンディショニング剤
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効能
栄養補助食品
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確認試験
本品につき,赤外吸収スペクトル測定法〈2.25〉の
臭化カリウム錠剤法により試験を行い,本品のスペクトルと
本品の参照スペクトルを比較するとき,両者のスペクトルは
同一波数のところに同様の強度の吸収を認める.もし,これ
らのスペクトルに差を認めるときは,本品を少量の水に溶か
し,60℃,減圧で水を蒸発し,残留物を乾燥したものにつ
き,同様の試験を行う.
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定量法
本品約0.12gを精密に量り,水40mLに加温して溶か
す.冷後,0.1mol/L水酸化ナトリウム液で滴定〈2.50〉する
(電位差滴定法).同様の方法で空試験を行い,補正する.
0.1mol/L水酸化ナトリウム液1mL=14.71mg C5H9NO4
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純度試験
(1) 溶状 本品1.0gを2mol/L塩酸試液10mLに溶かすとき,
液は無色澄明である.
(2) 塩化物〈1.03〉 本品0.5gをとり,希硝酸6mL及び水
20mLに溶かし,水を加えて50mLとする.これを検液とし,
試験を行う.比較液には0.01mol/L塩酸0.30mLを加える
(0.021%以下).
(3) 硫酸塩〈1.14〉 本品0.6gをとり,希塩酸5mL及び水
30mLに溶かし,水を加えて45mLとする.これを検液とし,
試験を行う.比較液は0.005mol/L硫酸0.35mLに希塩酸5mL
及び水を加えて45mLとする.ただし,検液及び比較液には
塩化バリウム試液5mLずつを加える(0.028%以下).
(4) アンモニウム〈1.02〉 本品0.25gをとり,試験を行う.
比較液にはアンモニウム標準液5.0mLを用いる(0.02%以下).
(5) 重金属〈1.07〉 本品1.0gに水20mL及び水酸化ナトリ
ウム溶液(1→25)7mLを加え,加温して溶かす.冷後,希酢
酸2mL及び水を加えて50mLとする.これを検液とし,試験
を行う.比較液は鉛標準液1.0mLに希酢酸2mL及び水を加
えて50mLとする(10ppm以下).
(6) 鉄〈1.10〉 本品1.0gをとり,第1法により検液を調製
し,A法により試験を行う.比較液には鉄標準液1.0mLを加
える(10ppm以下).
(7) 類縁物質 本品約0.5gを精密に量り,塩酸0.5mL及び
水に溶かし,正確に100mLとする.この液10mLを正確に量
り,0.02mol/L塩酸試液を加えて正確に50mLとし,試料溶
液とする.別にL-アスパラギン酸,L-トレオニン,L-セ
リン,L-グルタミン酸,グリシン,L-アラニン,L-シス
チン,L-バリン,L-メチオニン,L-イソロイシン,L-
ロイシン,L-チロジン,L-フェニルアラニン,L-リジン
塩酸塩,塩化アンモニウム,L-ヒスチジン及びL-アルギ
ニンをそれぞれ2.5mmolに対応する量を精密に量り,
0.1mol/L塩酸試液に溶かし,正確に1000mLとし,標準原液
とする.この液5mLを正確に量り,0.02mol/L塩酸試液を加
えて正確に100mLとする.この液6mLを正確に量り,条件で液体クロマトグラフィー〈2.01〉により試験を行う.
試料溶液及び標準溶液から得たピーク高さから試料溶液
1mLに含まれるグルタミン酸以外のアミノ酸の質量を求め,
その質量百分率を算出するとき,グルタミン酸以外の各アミ
ノ酸の量は0.2%以下であり,その合計は0.6%以下である.
試験条件
検出器:可視吸光光度計(測定波長:570nm)
カラム:内径4.6mm,長さ8cmのステンレス管に3μm
のポリスチレンにスルホン酸基を結合した液体クロマ
トグラフィー用強酸性イオン交換樹脂(Na型)を充て
んする.
カラム温度:57℃付近の一定温度
反応槽温度:130℃付近の一定温度
反応時間:約1分
移動相:移動相A,移動相B,移動相C,移動相D及び移
動相Eを次の表に従って調製後,それぞれにカプリル
酸0.1mLを加える.
0.02mol/L塩酸試液を加えて正確に50mLとし,標準溶液と
する.試料溶液及び標準溶液20μLずつを正確にとり,次の条件で液体クロマトグラフィー〈2.01〉により試験を行う.
試料溶液及び標準溶液から得たピーク高さから試料溶液
1mLに含まれるグルタミン酸以外のアミノ酸の質量を求め,
その質量百分率を算出するとき,グルタミン酸以外の各アミ
ノ酸の量は0.2%以下であり,その合計は0.6%以下である.
試験条件
検出器:可視吸光光度計(測定波長:570nm)
カラム:内径4.6mm,長さ8cmのステンレス管に3μm
のポリスチレンにスルホン酸基を結合した液体クロマ
トグラフィー用強酸性イオン交換樹脂(Na型)を充て
んする.
カラム温度:57℃付近の一定温度
反応槽温度:130℃付近の一定温度
反応時間:約1分
移動相:移動相A,移動相B,移動相C,移動相D及び移
動相Eを次の表に従って調製後,それぞれにカプリル
酸0.1mLを加える.
移動相の切換え:標準溶液20μLにつき,上記の条件で
操作するとき,アスパラギン酸,トレオニン,セリン,
グルタミン酸,グリシン,アラニン,シスチン,バリ
ン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロジン,
フェニルアラニン,リジン,アンモニア,ヒスチジン,
アルギニンの順に溶出し,イソロイシンとロイシンの
分離度が1.2以上になるように,移動相A,移動相B,
移動相C,移動相D及び移動相Eを順次切り換える.
反応試薬:酢酸リチウム二水和物204gを水に溶かし,
酢酸(100)123mL,1-メトキシ-2-プロパノール
401mL及び水を加えて1000mLとし,10分間窒素を
通じ,(Ⅰ)液とする.別に1-メトキシ-2-プロパノ
ール979mLにニンヒドリン39gを加え,5分間窒素を
通じた後,水素化ホウ素ナトリウム81mgを加え,30
分間窒素を通じ,(Ⅱ)液とする.(Ⅰ)液と(Ⅱ)液を1容
量と1容量の混液とする(用時製する).
移動相流量:毎分0.20mL
反応試薬流量:毎分0.24mL
システム適合性
システムの性能:標準溶液20μLにつき,上記の条件で
操作するとき,グリシンとアラニンの分離度は1.2以
上である.
システムの再現性:標準溶液20μLにつき,上記の条件
で試験を6回繰り返すとき,標準溶液中の各アミノ酸
のピーク高さの相対標準偏差は5.0%以下であり,保
持時間の相対標準偏差は1.0%以下である.
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貯法
容器 気密容器.
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乾燥減量
0.3%以下(1g,105℃,3時間).
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強熱残分
0.1%以下(1g).
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説明
L-Glutamic acid, or L-2-aminopentanedioic acid, is a naturally
occurring amino acid of plant and animal proteins. It has a very
faint odor reminiscent of yeast or freshly baked bread. It has a
mild, somewhat sweet, meat-like taste.
The average glutamic acid content of food proteins is 20 percent.
Expressed as glutamic acid per 100 g of the edible portions,
medium fat beef contains about 2.65 g of glutamic acid; whole
liquid cow milk, 0.82 g; lean pork, 2.16 g; haddock, 2.32 g; peas,
5.58 g; soybeans, 7.01 g; commeal, 1.62 g; and whole grain wheat
flour, 4.16 g. In addition, free glutamic acid is present in many
vegetables, fish, and meats in small amounts (0. 005 to 0.23 g per
100 g) and as high as 2 g per 100 g in some varieties of cheese.
Recent estimates of free amino acids in the milk of various species
indicated that the free glutamic acid in human milk is about 0.22
g per 100 mL.
Glutamic acid and its salts are prepared commercially by hydrolysis
of gluten (wheat, corn, soybean, sugarbeet protein); by fermentation
from glucose-containing raw materials; the racemic acid
may be resolved into the d- and ι-isomer by fractional crystallization;
from 2 -cyclopentenylamine; by microbial conversion of aketoglutaric
acid; or by an alternative method, using Bacillus
megatherium-cereus; from fumaric acid using B. pumilus; from
starch.
Glutamic acid and the hydrochloride as well as the mono-sodium,
-potassium, and -ammonium salts of L-glutamic acid share similar
physical properties: they are nearly odorless, white, free-flowing
crystalline powders, and except for glutamic acid and glutamic
acid hydrochloride, are freely soluble in water. Glutamic acid is
slightly soluble and glutamic acid hydrochloride moderately soluble
in water. The pH of a saturated solution is about 3.2.
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化学的特性
L-Glutamic acid has a very faint odor reminiscent of yeast or freshly baked bread and a mild, somewhat sweet, meat- like taste This is a naturally occurring amino acid of plant and animal proteins The average glutamic acid content of food proteins is 20%, expressed as glutamic acid per 100 g of the edible portions For a detailed description, see Burdock (1997).
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天然物の起源
Reported as occurring in many vegetable proteins, in beef fbrin, in the chrysalis of silkworm, in the hydro- lysate of crystalline insulin Also present in other important peptides, such as glutathione, tyrocidin, folic acid, β-lactoglobulin, secretin and bacitracin, and in growth hormone
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使用
L-glutamic acid or its salt, monosodium glutamate (MSG), is used as an
additive to human food to enhance the taste. Although seaweed had
been used in Asia to enhance food flavor for over 1000 years, it was not until 1908 that the essential component responsible for the flavor
phenomenon was identified as glutamic acid. From 1910 until 1956,
monosodium glutamate was extracted from sea weed, a slow and costly
method. In 1956, Ajinomoto, a Japanese company, succeeded in producing
glutamic acid by means of fermentation. Today, L-glutamic acid
or MSG is generally made by microbial fermentation using genetically
modified bacteria.
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定義
ChEBI: An optically active form of glutamic acid having L-configuration.
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製造方法
By hydrolysis of gluten (wheat, corn or other vegetable sources); by fermentation from glucose-containing raw materials; the racemic acid may be resolved into the d- and l-isomer by fractional crystallization; from 2-cyclopentenylamine; by microbial conversion of α-ketoglutaric acid; or by an alternative method, using Bacillus megatherium-cereus; from fumaric acid, using B pumilus; from starch.
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安全性
天然のグルタミン酸は、過剰に摂取すると、睡眠障害神経症、幻覚などが生じる危険性があります。また、化学調味料であるグルタミン酸ナトリウムを過剰に摂取すると、頭痛や火照り、手足のしびれが起きるといわれています。
一方で、適切な摂取は人体にとって、脳の働きの活性化、アンモニアの解毒、利尿効果に加え、脂肪の蓄積を抑える効果や、美肌効果、血圧を下げる効果などの研究結果が報告されています。
水や塩などと同様に、過剰摂取すると人体に必要な物質であっても毒となるため、使用時は、用法容量を守る必要があります。
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Biotechnological Production
For industrial production of L-glutamic acid, molasses (sucrose), starch hydrolysates (glucose) and ammonium sulfate are generally used as carbon and nitrogen sources, respectively. Key factors in controlling the fermentation are the presence of biotin in optimal concentration – to optimize cell growth and the excretion of Lglutamate – and sufficient supply of oxygen to reduce the accumulation of byproducts, such as lactic and succinic acid. In biotin-rich fermentation media the addition of penicillin or cephalosporin C favors the overproduction of L-glutamic acid due to effects on the cell membrane. The supplementation of fatty acids also results in an increased permeability of the cells thus enhancing glutamate excretion.
A strain of Microbacterium ammoniaphilum cultured under biotin-deficient conditions produced 58 % of L-glutamic acid formed from glucose via phosphoenolpyruvate, citrate, and of a-ketoglutarate and the other 42 % via the tricarboxylic acid (TCA) or the glyoxylate cycle.
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使用用途
グルタミン酸の主な使用用途として、調味料とサプリメントが挙げられます。
1. 調味料
グルタミン酸は、旨味成分の1種であるため、グルタミン酸塩であるグルタミン酸ナトリウムがうまみ調味料として製品化され販売されています。
化学調味料の場合は、ナトリウムと結合したグルタミン酸なトリムという水に溶解しやすい状態で、販売されています。グルタミン酸は、昆布などの海藻や白菜、緑茶、トマトなどの植物性食品に豊富に含まれています。
2. サプリメント
グルタミン酸は、脳の神経伝達物質の1つとしての機能に加えて、の解毒作用や、筋肉や免疫力を強化するタンパク質の構成成分になるなど、生体にとって重要な機能を担います。
そのため、グルタミン酸不足は、脳の機能低下や排尿阻害につながる可能性があります。グルタミン酸不足を補うことを目的に、サプリメントとして製品化されています。
また、グルタミン酸には、脳の興奮を鎮めるGABAを生成する働きもあります。GABAはアミノ酸の1種で、ストレスを軽減させ、リラックス効果があるため、近年サプリメントや食品に配合されている成分です。
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生物活性
The predominant excitatory transmitter in the mammalian central nervous system. Acts at ionotropic and metabotropic glutamate receptors.
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安全性プロファイル
Human systemic effects
by ingestion and intravenous routes:
headache and nausea or vomiting. When
heated to decomposition it emits toxic
fumes of NOx.
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概要
重要な神経伝達物質.γ-カルボキシ基がNaの塩は,昆布のうま味成分であり,調味料として重要
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純化方法
Crystallise L-glutamic acid from H2O acidified to pH 3.2 by adding 4volumes of EtOH, and drying at 110o. Likely impurities are aspartic acid and cysteine. It sublimes at 170-175o/10mm. It melts at 160o with cyclisation to L-pyrrolidone carboxylic acid. [Dunn & Brophy J Biol Chem 99 224 1958, Parikh et al. J Am Chem Soc 80 9571958, Greenstein & Winitz The Chemistry of the Amino Acids J. Wiley, Vol 3 pp 1929-1952 1961, Beilstein 4 III 1530, 4 IV 3028.]