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外観
本品は白色の結晶又は結晶性の粉末で,においはないか,
又はわずかに特異なにおいがあり,味はわずかに苦い.
本品は水又はギ酸に溶けやすく,メタノールにやや溶けに
くく,エタノール(95),無水酢酸又はジエチルエーテルにほ
とんど溶けない.
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性質
通常では、白色の結晶粉末状態で存在しています。水には溶けやすいものの、にやや溶けにくく、やエーテルには溶けにくいです。
水溶液は弱酸性を示します。5w/v%溶液でpH4.0~5.5です。融点は231~232℃であり、化学的に安定な化合物ですが、粉末は吸湿性を有します。また、光によって変質するおそれがあるため、保管には遮光が必要です。
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解説
グアヤコールスルホン酸カリウム (Potassium guaiacolsulfonate / 日本薬局方一般名) とは、去痰作用を持つ化合物の1種です。
4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゼンスルホン酸カリウム (Potassium 4-hydroxy-3-methoxy benzene sulfonate / IUPAC命名法) 、Sulfoguaiacolとも呼ばれています。CAS番号は16241-25-1,1321-14-8,78247-49-1と複数の番号で表されることがあるようです。
ただし、1321-14-8は位置異性体を許容するようで、現行の日本薬局方では16241-25-1に改められています。組成式はC7H7KO5Sですが、市販品には1/2水和物であることを明示しているものもあります (C7H7KO5S · 0.5H2O) 。
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製造法
1881年にグアヤコールからスルホン酸カリウム誘導体が合成されることで作られました。その後も、グアヤコールスルホン酸カリウムの製造法は化学合成です。一般には、グアヤコールのスルホン化によりグアヤコールスルホン酸を獲得し、それをカリウム塩にすることで合成されます。
グアヤコールは、ユソウボク (Guaiacum officinale) から得られるグアヤク樹脂 (Gum guaicumまたはguaiac resin ) から1826年に初めて単離された物質です。古くはグアヤコールも去痰剤として使われていました。
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確認試験
(1) 本品の水溶液(1→100)10mLに塩化鉄(Ⅲ)試液2滴を加
えるとき,液は青紫色を呈する.
( 2) 本品0.25gを水に溶かし,500mLとする.この液
10mLをとり,pH7.0のリン酸塩緩衝液を加えて100mLとす
る.この液につき,紫外可視吸光度測定法〈2.24〉により吸
収スペクトルを測定し,本品のスペクトルと本品の参照スペ
クトルを比較するとき,両者のスペクトルは同一波長のとこ
ろに同様の強度の吸収を認める.
(3) 本品の水溶液(1→10)はカリウム塩の定性反応〈1.09〉
を呈する.
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定量法
本品約0.3gを精密に量り,ギ酸2.0mLに溶かし,無水
酢酸50mLを加え,0.1mol/L過塩素酸で滴定〈2.50〉する(電
位差滴定法).同様の方法で空試験を行い,補正する.
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純度試験
(1) 溶状 本品1.0gを水20mLに溶かすとき,液は無色澄
明である.
(2) 硫酸塩〈1.14〉 本品0.8gをとり,試験を行う.比較
液には0.005mol/L硫酸0.50mLを加える(0.030%以下).
(3) 重金属〈1.07〉 本品1.0gをとり,第1法により操作し,
試験を行う.比較液には鉛標準液2.0mLを加える(20ppm以
下).
(4) ヒ素〈1.11〉 本品1.0gをとり,第1法により検液を調
製し,試験を行う(2ppm以下).
(5) 類縁物質 本品0.20gを移動相200mLに溶かし,試料
溶液とする.試料溶液1mLを正確に量り,移動相を加えて
正確に100mLとし,標準溶液とする.これらの液5μLずつ
を正確にとり,次の条件で液体クロマトグラフィー〈2.01〉
により試験を行う.それぞれの液の各々のピーク面積を自動
積分法により測定するとき,試料溶液のグアヤコールスルホ
ン酸カリウム以外のピークの合計面積は,標準溶液のグアヤ
コールスルホン酸カリウムのピーク面積より大きくない.
操作条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:279nm)
カラム:内径約4mm,長さ20~25cmのステンレス管に
5~10μmの液体クロマトグラフィー用ジメチルアミ
ノプロピルシリル化シリカゲルを充てんする.
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素カリウム試液/メタノ
ール混液(20:1)
流量:グアヤコールスルホン酸カリウムの保持時間が約
10分になるように調整する.
カラムの選定:グアヤコールスルホン酸カリウム50mg
及びグアヤコール50mgを移動相50mLに溶かす.こ
の液5μLにつき,上記の条件で操作するとき,グアヤ
コール,グアヤコールスルホン酸カリウムの順に溶出
し,その分離度が4以上のものを用いる.
検出感度:標準溶液5μLから得たグアヤコールスルホン
酸カリウムのピーク高さが10mm以上になるように調
整する.
面積測定範囲:グアヤコールスルホン酸カリウムの保持
時間の約2倍の範囲
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貯法
保存条件 遮光して保存する.
容器 密閉容器.
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説明
Sulfogaiacol is a cough suppressant with expectorant properties, and it can be used for research on acute respiratory infections with oral activity.
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使用
Expectorant.
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適用法令
強い毒性・危険性は知られておらず、危険有害性区分は急性毒性 (経口・吸入) がカテゴリー4、皮膚刺激性・眼刺激性がカテゴリー2です。消防法や労働安全衛生法といった国内法規には非該当となっています。
ただし、化学物質の一般的な留意点として、防塵マスクと保護手袋を着用し、局所排気装置がある環境で取り扱う必要があります。また、強酸化剤との混在も避けましょう。
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使用用途
グアヤコールスルホン酸カリウムは、主に一般用医薬品の成分として使用されます。気道分泌を促進し、痰の粘稠度を低下減少させることによって、痰を出しやすくする作用を持っており、弱い消毒作用も有します。
そのため、総合感冒薬や鎮咳・去痰薬の成分の1つになっていることが多いです。いわゆる「のどに絡む痰」を出しやすくする成分です。日本薬局方にも収載されています。