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毒性
硫酸タリウムは人体に対しても有毒です。過去の事故や事件による摂取例では、食欲不振、嘔吐、腹痛、血便等が起きた後、手足の知覚異常や幻覚、痙攣、頻脈、脱毛等の症状が報告されています。重症化すると、腎臓や中枢神経系の異常、心不全によって死亡します。
誤飲防止のため、硫酸タリウムの入った容器には必ず物質名を明記する必要があります。食品に使われるような容器に入れて保管したり、飲食しながら取り扱ったりすると、誤飲・誤食のリスクが高まるため大変危険です。
ラットを用いた実験では、硫酸タリウムの原体 (製剤化されていない純品) は経皮毒性も確認されているため、皮膚への付着にも注意が必要です。や保護めがね等の保護具を着用し、皮膚に付着した場合は水でよく洗い流します。目に入った場合は流水でよく洗浄した後、医師の診察を受けましょう。
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使用用途
硫酸タリウムは、かつて殺鼠剤に利用されていました。水に溶けるため毒餌を調整しやすく、ネズミが避けずに食べるため、ネズミが好む餌に硫酸タリウム溶液を加えて毒餌を調製していました。
硫酸タリウムは排泄されずにネズミの体内に蓄積されるため、一度に致死量を食べなかった個体も、継続的に毒餌を摂取することで死亡します。また、生殖毒性を持つためネズミの繁殖が抑えられ、長期的に個体数を低く抑えることが可能です。
硫酸タリウムを含む殺鼠剤は、以前は農薬として登録されていましたが、毒性の高さや流通量の少なさ等の理由により登録が失効しました。硫酸タリウムの農薬登録が失効してからは、や、ジフェチアロール等の別の成分が殺鼠剤に用いられています。
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安全性プロファイル
Poison to humans by ingestion. Experimental poison by ingestion, intravenous, and subcutaneous routes. Human systemic effects: cardiomyopathy, diarrhea, effects on recordings from peripheral motor nerve, hair changes, hypermotility, nausea or vomiting. Its main hazard is due to its accumulation, especially in liver, brain, and skeletal muscle; readily absorbed by gastrointestinal tract and skin. A cellular toxicant like arsenic. Fatal human dose is about 500 mg of thallium. Intake of thahum causes depilation. Many reported fatalities. An experimental teratogen. When heated to decomposition it emits very toxic fumes of SOx and T1. Pesticide for control of rats, moles, and house mice. See also THALLIUM COMPOUNDS and SULFATES .
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概要
硫酸タリウムとは、タリウムの硫酸塩です。
無色の結晶性粉末で、味や臭いはありません。水やに溶けるため、液剤の状態でも使用されます。
硫酸タリウムは劇物に指定されており、保管・使用には注意が必要です。急性毒性および慢性毒性を持ち、経口摂取すると消化管や神経系、呼吸器、腎臓等に影響を与えます。
さらに生殖毒性も確認されており、精巣や胎児の発生に影響する恐れがあります。これらの毒性を活かして殺鼠剤として使用されていましたが、現在は用いられていません。
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特徴
硫酸タリウムはタリウムの硫酸塩であり、化学式はTl2SO4です。室温では安定な無色の結晶で、水に溶かすとタリウムイオン (1価) と硫酸イオンに電離します。
原料であるタリウムは13族の金属元素で、、鉛、などの精錬工程で副産物として回収されます。タリウムは主に1価イオンの状態で存在しますが、酸化されると3価イオンを生じ、酸化タリウム等を形成することがあります。
硫酸タリウムの基本的な特性 (分子量、比重、溶解性) は以下の通りです。
- 分子量:504.83
- 比重:6.77
- 溶解性:水に溶ける (20℃のとき4.87g/100mL)