解説
起泡剤,溶媒に溶かしたときに溶液の泡を生じさせて、生成した泡を安定にして消滅を防ぐ作用をもつ物質をさす。これと別に、反応・分解によって多量の気体を発生して泡を生じる物質(たとえば炭酸水素ナトリウム)があり、これらは発泡剤といわれるが、起泡剤とは本来別のものである。もっとも、しばしば混用されているので注意が必要である。
泡立ちやすさを左右する起泡力と、泡の安定性を左右する泡沫(ほうまつ)安定度の二つの因子が、起泡剤にとっては重要な性質である。両因子ともに優れたものを泡立て剤、泡沫安定度に優れたものは泡沫安定剤とよんで区別する。せっけん、アルキル硫酸塩などは両因子ともに優れており、良好な泡立て剤である。卵白、サポニン、ゼラチンなどは泡沫を安定化する作用が強いが、起泡力はさほどではない(菓子用のメレンゲなどをつくってみるとよくわかる)。
浮遊選鉱用には松根油など植物油系の起泡剤が、消火器(泡沫消火器)にはアルブミンやケラチンなどの酸分解物の溶液がそれぞれに多用される。セメントやフォームラバーなども相応した界面活性剤を起泡剤として用いる。もっとも、気泡コンクリートなどは、アルミニウム粉末を混入して、発生する水素ガスによる気泡をつくらせることもあるが、この場合は発泡剤の利用である。