亜硝酸イソブチル

外観

うすい黄色～黄色～黄赤色透明液体

種類

亜硝酸イソブチルは、前述の通り指定薬物に指定されているため、所持や使用が厳しく規制されています。現状では、研究開発用の有機合成化学試薬としてのみ販売されています。

尚、指定薬物は下記のように規定されているため、目的外での使用はできません。購入の際は使用用途の届け出が必要です。

「疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途以外の用途に供するための製造、輸入、販売、授与、所持、購入又は販売若しくは授与の目的での貯蔵、若しくは陳列は禁止」

なお、試薬製品としての亜硝酸イソブチルは、0-10°Cにて保管が必要な試薬です。光、湿気、熱を避けて保管し、特に湿気では分解します。製品容量には、25 mL , 100mL , 500mLなどの種類があります。

化学的性質

亜硝酸イソブチルの化学的性質

図2. 亜硝酸イソブチルの化学反応

亜硝酸イソブチルは、一般的な亜硝酸エステル同様、亜硝酸とイソブタノールとのエステル化反応により合成可能です。また、亜硝酸イソブチルは、塩基存在下では加水分解されて逆の反応が起こります。すなわち、この反応では元のアルコールと亜硝酸塩を与えます。

また、引火性が高く、水中で分解する化合物です。加熱によって分解し、分解生成物として窒素酸化物 (NOx) を生成します。酸化物と危険な反応を起こす可能性があるため、酸、酸化物との混触は避けるべきです。

解説

亜硝酸イソブチル,特異臭のある液体．沸点67 ℃．d²²₄ 0.870．n²²_D1.3715．エタノール，エーテルなどの有機溶媒に可溶，水に微溶．徐々に加水分解を受ける．ニトロソ化剤やジアゾニウム塩の合成に用いられる．蒸気の吸入によって血管拡張や血圧降下などを引き起こす．
森北出版「化学辞典（第2版）

用途

芳香剤添加物 (NITE調査)カルボキシメチルセルロース原料、農薬?医薬原料 (SRI:CHEMICAL ECONOMICS HANDBOOK)可塑剤?医薬原料 (化学工業日報社)

応用

亜硝酸イソブチルによるシアン化物解毒の原理

図3. 亜硝酸イソブチルによるシアン化物の解毒

亜硝酸イソブチルは、ヘモグロビンのヘム鉄のFe²⁺を酸化させてFe³⁺のメトヘモグロビンを形成します。この際、シアン化物イオン (CN^-) が存在していると、メトヘモグロビンのFe³⁺と配位結合しシアンメトヘモグロビンとなります。

これによって、ミトコンドリアの酸化型のシトクロム酸化酵素複合体 (COX) のFe³⁺へのシアンの配位結合を防ぐことが可能で、有害事象が阻害されるというメカニズムです。さらに、を別途投与すると、シアンメトヘモグロビンから徐々に解離するシアンがチオ硫酸ナトリウムに結合してチオシアン酸になり、無毒化されます。

製造

亜硝酸イソブチル,イソブチルアルコールと亜硝酸ナトリウム水溶液とを硫酸の存在下に反応させて合成される．

化学的特性

Isobutyl nitrite is a colourless to pale yellow liquid and has a pleasant and fruity odor.

使用

Isobutyl nitrite is an alkyl nitrite. It is mainly used in “poppers”, consumed as a recreational drug for their psychoactive effects. Poppers are illegal in many countries, and as a result are commonly sold as air fresheners or deodorizers. Other minor uses of isobutyl nitrite include as an intermediate in the synthesis of aliphatic nitrites, nail polish removers, video head cleaners, fuels, and jet propellants.
Isobutyl nitrite was used to study inhalant-induced immunotoxicity. It is used in the preparation of plasmoquin.

製造方法

Isobutyl nitrite is synthesized by reacting isobutyl alcohol with sodium nitrite in dilute sulfuric acid (NTP, 1996).

一般的な説明

Isobutyl nitrite is an ester of isobutanol and nitrous acid, which has a various range of household and industrial applications. It is commonly added to a number of household cleaning liquids and air fresheners. As a volatile liquid, it also serves as a "room odorizer" which is widely sold without a prescription.
Besides, Isobutyl nitrite has also been applied in pharmaceuticals, in which it acts as a vasodilator (blood vessel relaxant) and is used medically as part of the emergency antidote for cyanide poisoning.

空気と水の反応

Highly flammable. Insoluble in water. Slowly decomposes in water.

反応プロフィール

An oxidizing agent but can serve as a reducing agent. May begin a vigorous reaction that culminates in a detonation if mixed with reducing agents, including hydrides, sulfides, nitrides, ammonium salts, cyanides, and many fuels.

火災危険

Isobutylnitrite is flammable.

使用用途

亜硝酸イソブチルの主な使用用途は芳香剤の添加物です。カルボキシメチルセルロース原料、農薬・医薬原料、可塑剤・医薬原料にもなります。

また、血管拡張作用がある他、シアン中毒の解毒剤としても使われます。いわゆるラッシュ系ドラッグとしても認識されている物質です。平成19年に薬事法第2条第 14項に規定する指定薬物に指定されました。

医療用および人体に危害を及ぼすおそれのない用途以外での製造・輸入・販売等は禁止されています。尚、毒物及び劇物取締法では、劇物に指定されています。